ヴィック式 建築ヴィジュアライザーへの道#3-レンダリング編(写真をCGで模写)

お久しぶりです。VICCの堀尾です。

前回までは作業環境や効率化などの技術面について書いていましたが、今回からは次の工程であるレンダリングについて書いていこうと思います。

はじめに

僕は2021年の春に、ヴィックに新卒入社し建築のヴィジュアライズをメインに働いています。もちろん、学生の時にもCGを使って自分の作品のヴィジュアライズはしていて、その時は主にRhinoceros+Lumionで、Photoshopのレタッチで仕上げるという方法でした。

Lumionは各種CADとLiveSynkで簡単に連携することができ、様々なマテリアルがプリセットで用意されているので簡単にそれっぽい絵が出せます。ただ、アングル等の検討もマテリアルがついた状態で探れるため、出てくる絵に惑わされてしまいやすいです。

(とはいえ、リアルタイムで絵を確認しながらアングルやマテリアルを検討できるのは非常に便利です。今現在は3dsMax+VrayをメインでたまにUnrealEngineという感じですが、セッティングをリアルタイムで確認できるのは大きなメリットだと感じています。)

00 : 写真をCGで模写する目的

さて、本題に入りましょう。

CGを使って絵を描くということは、絵をかくときに使う”筆”の代わりに”ソフトウェア”を使うわけですが、筆と違って、ソフトウェアのパラメーターは膨大で何をいじったらどうなるかが感覚的にわかりにくいとおもいます。

そこで出てくるのが写真の模写ですこれは、写真を再現する”というゴールを明確にし、自分の脳内イメージとソフトウェアのパラメーターを結び付けるのにとてもいい訓練になります。
自分の描きたい絵をかきながら習得する方法もあると思いますが、”ソフトウェアを理解する”という点においては、ゴールを明確にした模写のほうが適していると考えています。

01 : 分析と理解

今回の題材は、メキシコを代表する建築家の一人。ルイス・バラガン(Luis Ramiro Barragan Morfin)が後半生を過ごし、2004年にはユネスコ世界遺産に登録された自宅兼アトリエ(Casa Estudio Luis Barragán)の屋上の写真です。

Casa Luis Barragán (photo by
Leonardo Canion)

CGで一から現実を再現するとなると、まず題材としている写真の情報を分析して把握しなければなりません。

白黒にしてみたり、同じような写真を探してみるのも一つの方法です。街を歩いているときの何気ない景色にもヒントがあるかもしれません。とにかくいろいろなものを見て考えることが大事です。そうして写真を自分の中に入れた後、CGに落とし込んでいきます。

下の写真は、この写真の模写をする前に書いたものです。頭でいろんなことを考えながら、意識したほうがよさそうなところをラフにメモしておきます。後工程であるライティングや、マテリアルを乗せる工程でもこのメモをみて確認したりします。
作業に入ってしまうと、全体を俯瞰して見られなくなってしまうことがよくあるので、最初の段階でイメージを把握してメモしておくことはとても重要です。

”本当にクオリティの高いビジュアルはどうやってできるか(表現編②)”でご紹介したレタッチワークフローの中にもスケッチがありました。これも同様で、作業に入る前の下準備をうまくできるようになると、迷いなくゴールまで走っていけます。

02 : モデリングとアングル調整

モデルとカメラを調整しながらアングルをすり合わせていきます。 ここでは、CG上でのカメラの画角の感覚をつかみます。

とはいえ、図面も何もない状況からモデルを作成するのは、思ってる以上に難しい作業です。
参考までに僕が作るときの考え方を。

  1. スケール感を予想する。
    (基本的にモデルはリアルスケールでつくる)
  2. 画面に映っているオブジェクトの要素を確認する
    (今回であれば、 床・壁×2・奥のタワー・少し見える奥の木)
  3. パースのかかり具合などを確認しながらカメラの位置を想像して、それぞれの要素が平面・立面でどのように配置されればよいかを考える
  4. ラフにモデル作ってカメラを置く
  5. 元写真を重ね合わせた状態で、モデルとカメラの位置をすり合わせていく

これは、今回のような建物の一部を作るときではなく、写真からモデルを起こすとき全般で適応できる考え方です。写真から照明のモデルを作るにしても、まず要素の分解をしてモデルの中で再構成するという手順は変わりません。

考えてることイメージ

03 : ライティング

ライティングは、最初に白黒にした元画像をもとに合わせていきます。この作業がとても重要で、初めてやるときに苦労しました。ライトの位置や、素材の明度、反射感、カメラのセッティングをいじりながら調整していきます。色を入れる前の明暗の情報量でどこまで詰められるかが、最終アウトプットのクオリティにかかわってきます

カメラの設定は現実と同じように、シャッター速度やISO、F値などの項目があります。なので、実際のカメラで写真を撮るという行為がそのままCGに生かすことができます。逆に言うと、基本的な知識を持っていないと理解や調整が難しく感じるかもしれません。

(今はスマートフォンを適当に向けるだけできれいな写真が撮れてしまいますが、一度はカメラに触れてみることをお勧めします。しっかりとカメラを構えて被写体を捉えるという行為には、本当にいろんなことが詰まっています。周りの景色・要素の観察, 光のまわり方, レンズの長さ(mm), その他のセッティング…いろんなことを考えていると、自分の目に映ったものを誰かに伝えられる形で切り抜くことがどれほど難しいことなのか。そして、現実の世界の持つ圧倒的な情報量を再確認できると思います。)

元画像の白黒
ライティングと素材の明暗のみでレンダリング

04 : モデルにマテリアル・素材をのせる

次に、モデルに色や凹凸感など(マテリアル)を与えていきます。白黒で設定したライティングや明暗をベースにテクスチャを用意します。Photoshopを使って元の画像から切り取って作る場合もあれば、ほかのライブラリから引っ張って来たり、substanceを使うなど様々な方法があります。

と、簡単に言ってみましたが、これがなかなか大変な作業です。

僕らはの目は、基本的にモノに光が当たって反射してきたものをキャッチして、何かを見ています。つまり、本来物体が持っている色というのは、僕らが見ているものとは異なるわけです。

CG上でマテリアルを設定する場合は、その物体が持っている色を乗せてあげないといけません。それをベースに、表面の反射・粗さ・屈折の情報を与えてあげると初めて現実に近しいマテリアルが出来上がってきます。今回のように、写真から正しいマテリアルをセットするためには、写真の中の太陽光・環境光を考えて、物体が本来持っている色・質感を見極めなければならないのです。

もちろん一発でできるわけではありません。カメラのセッティング・ライティング・マテリアルは相互に影響しあっているものです。最初に作ったものをたたき台にして、各要素を少しずつ調整して地道にゴールへと持っていくのです。

元画像
レンダリング画像

最後に

プロとして絵を描くにあたって我々に求められることは、建築やその建築が置かれている環境や状態、特徴を捉えて、クライアントが理想としているものを他の人にわかりやすく伝えたり、印象付けたり、共感させたりできるようなパワーのあるものを創り上げることだと考えています。そのようなものを創るためには、絵(パース)に関してはクライアントより多くの引き出しや、”目”を持っていなければいけません。このCG模写は、その”目”を養う訓練の一つでもあります。

お時間あればぜひ試してみてください。

そういえば、、
twitter, instagramを始めました。日々制作しているビジュアルや日常、業界に関わる様々な情報を発信していきたいと思っています。では、、

kaito.horio

ヴィック・シンテグレートのヴィジュアル担当。最年少。最近コーヒーがおいしく飲めるようになりました。

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