本当にクオリティの高い建築のヴィジュアルはどうやってできるか(表現編①)

はじめまして、松谷です。 ヴィック、シンテグレートの ヴィジュアル制作を担当しています。
前回のヴィックブログでは、ヴィックのイメージ制作ワークフローを取り上げながら、使用しているソフトウェアや制作で大切にしていることをワークフローをベースにざっくりとまとめました。

今回は特に表現について深堀りし、クオリティの高いヴィジュアルを制作するために大切にしていること、考えていることをお話しします。

坂茂建築設計 空中座禅道場 ヴィジュアル
UDCO 大宮駅グランドセントラルステーション化構想 (仮称)GCSプラン骨子案イメージパース
※現在検討中につき確定したものではありません。
槇総合計画事務所 鳥取県立美術館  ヴィジュアル 

当たり前のことですが、建築のパース製作の納期はタイトなことが多いです。建物の形が決まり、3Dデータが来てから○○日ということも少なくありません。このため意識をしていないと、大事なポイントがおろそかになりがちです。

クオリティの高い建築のヴィジュアル制作のポイントは以下です。

・建築のコンセプト、クライアントの要望を聞き、イメージを提案する。
・アングル、構図が肝。
・描き上げるイメージをまとめるスケッチとリファレンス探し。
・全体と細部を行き来するコツ。

今回は上二つについてお話しします。

建築のコンセプト、クライアントの要望を聞き、イメージを提案する。

プロジェクトの初期段階ではクライアントとミーティングをし、プロジェクトの概要を押さえていきます。
その際、クライアントからの要望がある場合や、スケッチだけで「今こんな感じです」からスタートする場合まで様々です。いずれにせよ、クライアントから要望や想いを咀嚼してより伝わるビジュアルに向かう提案をしていきます。

・ヴィジュアルで伝いたいことの重要度の整理(コンセプトの理解)
・周辺環境でヴィジュアルの味方にできる要素は何か(周辺環境の把握)
・伝わるヴィジュアルを製作するための方針の共有(構図、アングル、時間帯、季節、テイスト、人、植物の配置など)

上記の3つをクライアントと共有することは、コンペなどのタイトなスケジュールの中でコンセプトを整理する手助けになっていると思います。
ほとんどの場合、良いコミュニケーションがとれていると話しているうちにヴィジュアルが沸いてきます。

また制作するイメージの枚数によって、ストーリーを立てて提案することも大切です。よくイメージ一枚でたくさんのことを伝えたい!となることが多いですが、透視図(一点透視、二点透視、三点透視)をベースにするのであれば、一枚での情報量を多少減らしてあげると、格段に目を引くイメージが制作できるだろうと感じています。
もちろん、浮世絵や、多消失点の ヴィジュアルは日本的な感じもしますし、素晴らしい表現だと思います。
ここではお見せできませんがそのような表現も制作しています。(例:SANNAのヘタウマパース、熊大教授田中さんの ヴィジュアル 、通称タナパーなど)

我々はオペレータではなくコンサルタントなので、プロジェクトごとに常に最適なヴィジュアルを提案していくことを大切にしています。

SANAAのヴィジュアル ヘタウマパース

熊大教授田中さんの ヴィジュアル  通称タナパー

アングル、構図がイメージの肝

肝とか言ってみましたが実は私は痛風持ちです。みなさん生活習慣気をつけてください。水分補給が大切です。

それはさておき、アングル、構図は非常に重要です。ダメなアングルではその先いくらやってもそれなりのイメージにしかなりません。

アングルを決めるポイントとして3点を取り上げようと思います。

透視図法の理解と利用

アングル、構図は伝えたいことによって手法を選んでいきますが、基本的には透視図の特徴を生かして伝わるアングルを探します。1~3点透視、望遠、広角、場合によってはアクソメ、魚眼かもしれません。

透視図はフレームに収まるものの大小関係が生まれ、優先順位がつく図法です。建築のコンセプトが整理できていないとアングルを探す際、カメラの望遠、広角、立ち位置、注視点だけでも迷ってしまいます。伝えたいことを整理し、図法の特徴をうまく使いながらアングルを探し出すことが大切です。

それぞれの図法特徴と建築表現での生かし方は、またいつかお話できれば思います。

太陽光と構図

太陽光の当たり方は建築の形態を伝える重要な要素です。太陽光の位置によっては、形を正確に認識できなくなります。また影、陰影ができるので、「エントランスが暗くなるのは良くない」「開口部からは光を取り込みたい」など建築的な用途にも関係していきます。
そして太陽光の明暗は構図に強く連動してくるため、構図の中で光がどのような角度で入るか慎重に決定します。

このあたりも実例をあげてまたブログを上げたいと思います。

映画やゲーム業界の背景アーティストは、サムネイルスケッチといって黒、グレー、白の三階調で小さいスケッチをたくさんアイディア出してから制作に入るようです。 僕個人でも気になる構図が見つけたときにやってます。
サムネイルくらい小さくても、良い構図には力強さがあります。構図の引き出しが広がっていく感覚があります。

サムネイルスケッチの例

アングルと太陽光の入り方をミリ単位で調整して、より良いビジュアルのベース(構図)を作成していきます。
とても繊細なので神経研ぎすまして作業にあたっています。

一瞬を切り取る、最終形をイメージする力

コンセプトがしっかりと伝えられてかつ、インパクトがあるイメージを制作するには、アングルを決める段階である程度最終イメージが見えていないと制作できません。

一例ですが、ノルウェーのヴィジュアル制作会社Mir.のようなイメージは、建物のコンセプトと周辺環境のパワーを理解して一瞬を切り取ったようなイメージにまとめられています。時間帯、季節はもちろん、太陽の位置、雲の流れ方などをイメージできている状態で制作していかなければ、このようなアングル、構図は提案できないはずです。

ノルウェーのヴィジュアル制作会社Mir. のwebサイト

ヴィックとしてもそのようなイメージを目指すために、絵画や、映画などたくさんの良いものをみて考えることを続けています。こればかりは個々の感性や表現力を日々磨き来るプロジェクトのための引き出しを広げる努力をしつづけなければなりません。

最近個人的には、シドミードや、吉田博の作品から刺激を受けています。想い描くものを再現するためにデッサン教室に通っていたりします。

シドミードのヴィジュアル

吉田博の作品

ふいに現れる情景を忘れず心に焼き付けることも大切だと思いますし、ある程度心の余裕も必要でしょうか。

今回は以上になります。 また様々な角度からクオリティの高いヴィジュアル制作のポイントをお伝えしていこうと思います。

kazuki.matsuya

ヴィック、シンテグレートビジュアル担当。東洋大学非常勤講師。 ダイエット記録を社内Slackにてを日々更新中

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