シンテグレートの仕事#1 -複雑な形の施工サポート
シンテグレートは何をやっている会社なのでしょうか?
建設業界の中でも、私たちの仕事はあまり知られていません。さらに業界の外の方向けだと、説明はとても難しくなります。また仕事の種類も使うソフトも様々で、隣の人がやっている仕事に会社の中で驚くこともしばしばです。改めてシンテグレートはどんな仕事をしているのか、なるべくわかりやすく書いてみたいと思います。
複雑な形の施工サポート
私たちがやっている主な仕事の一つに、複雑な形の施工サポートがあります。どのようなことをやっているのでしょうか。実際にあった仕事の流れを追ってみていきましょう。
0.完成した建物
これが完成後の建物です。都内某所に最近竣工しており、四角い建物の中央に、三次元曲面(曲線を一方向に押し出したのではない曲面)のガラスカーテンウォールがついています。
今回依頼を受けたのは、このガラスカーテンウォールの部分についてでした。
1.ガラスの表面の形の調整
まず、クライアント(カーテンウォールの会社)を通して、このガラス部分の、高さごとの2次元CADデータをもらいました(このケースでは3Dデータはありませんでした)。確認すると、この元のデータは折れ線になっていました。最終的に製作したいのは滑らかな曲面なので、ここで折れ線を滑らかな曲線に直す作業をしました。
各曲線にこのような処理を行ってそれをつなげることで、滑らかな曲面を作りました。
これが最終的に作りたいガラス面全体の形
2.ガラス分割の仕方の検討
目標となるガラス面の形を作ることはできました。しかし、これを一枚のガラスで作ることはできないので、分割の仕方を考えなくてはいけません。
ここでポイントになったのが、冷間曲げ(コールドベント)という施工手法でした。曲面になっているガラスを取り付けるのではなく、平面のガラスと枠に施工の際に力をかけて、曲がった状態で固定するという方法です。ガラス一枚一枚を工場で曲面にする手間が省け、その分コストが抑えられます。
ガラスは無限に曲がるわけではないので、
- 作ることができるサイズで、
- 割れずに曲げられるような変形量になるように
ガラス面を分割しなくてはいけません。
このような条件を満たしつつ、見た目にもきれいな分割になるよう、設計者やクライアントと話し合い、検討を繰り返しました。
分割されたガラスは一枚一枚形が異なっています。製作ができるように、その一つ一つの形を分類し、CADで書き出しを行いました。
3.取り付ける骨組・金具のモデリング
ここまででガラスの形はなんとか決めることができました。しかし、ガラスの後ろにそれを支える骨組みがないと、建物としては自立できません。さらに、鉄骨にガラスを取り付けるためには、そのための金具も必要です。
そのため、ガラスの後ろの骨組(方立)をモデリングしました。
そして、方立にガラスを取り付けるための金具もモデリングしました。取り付けるための方法は同じでも、ガラスが曲面になっているため、金具の角度や形は少しずつ違っています。すべてを手作業でモデリングするのは大変なので、ソフトの機能を使って、半分自動的にモデリングができるようにしました。
重要なのは、これらのモデルがすべて
- 施工上の条件も織り込んだ
- このまま建てられるレベルの、詳細な
3Dモデルになっているということです。建物のパースを作るときや、設計で大まかなイメージをつかむためのものではなく、建てるための3Dモデルを作成しています。
以上が、この建物について私たちがやった仕事です。
4.まとめ
今回は一つの建物を例として書きましたが、施工サポートの仕事の場合、やっていることの質はどれも同じです。
複雑な形状でも建てられるように、設計された形自体の特徴や、施工のための条件を読み込み、設計者・施工者と何回も話し合ってモデリングをします。また、必要な場合は金具一つやねじ一個まで、ソフトウェアやプログラミングを用いてモデルをつくります。これによって設計意図通りの形を、確実に、円滑に施工することができるようになります。
コンピュータは建築の世界では、まず設計の業界で取り入れられ、斬新なデザインを生み出すことに使われてきました。しかしそれらを作る段階では、まだまだコンピュータの能力を生かし切れていません。施工に関わる皆さんを3Dモデルと情報でサポートすることに、私たちの強みはあるといえます。
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