社内コンペ日記#1 メッシュモデリングツールの可能性 

社内コンペ

だいぶ前になりますが、シンテグレート社内でデザインコンペを開催しました。参加者は天井照明、棚、電話スタンド、ゴミ箱などオフィス内のものを自由にデザインし、良かったものは実際に製作するということで社内で何組か参加し、最終的にコンペ案の中の天井照明を製作することになりました。


コンペの際のアニメーション



サーフェスかメッシュか

デザインのコンセプトはまた別の機会に話すとして、今回はメッシュモデリングツールの可能性について話そうと思います。今回はHoudiniを使ってデザインをしました。というかここ二、三年、そこまで数は多くないですが個人でなにかモノを作る際に意識的にHoudiniを使っています。

Houdiniは映像業界のビジュアルエフェクトを作るのに使われている非常に面白いCGモデリングツールで、メッシュがジオメトリを作成していく際のベースとなっています。このメッシュというのが肝で、これまでパラメトリックなデザイン、プロシージャルなデザインをしたい場合GrasshopperやDynamoを触っている人が大半だろうと思います。(中にはprocessing上でパラメトリックな3Dモデリングを可能にするライブラリを作った、とんでもない方もいますが。そのライブラリはこちら

ご存知の通りライノセラスは基本的にサーフェスでモデリングをしていくソフトで、Brep(Boundary Representation)という名の通り、サーフェスの境界(Boundary)で面を規定しています。そのためサーフェスには表裏、方向、などさまざまな情報が入っています。だからこそUntrimをすると、Trimする前のサーフェスに復元できたりもするわけですが、それだけ情報を保持しているということは、逆に一回一回の操作でそれだけの情報を計算しているので、当然複雑になるにつれて情報量は増え、操作はどんどん重くなります。

一方、メッシュはそういった情報を省くためにジオメトリのデータサイズとしてはかなり軽くなりますが、一度メッシュにしたオブジェクトは不可逆的で、元のNURBSには戻せません。メッシュにした途端に滑らかなサーフェスは失われるので、通常のモデリングの中で積極的にメッシュにするということはまずありません。ありえるとすれば、他のソフトウェアとの互換する際、止むを得ず行うくらいです。(それでもその後メッシュのデータ形式のまま作業を進めていくことはしません)


トリムしたサーフェスをUntrimで復元



メッシュの強み

しかしこの一見ネガティブなメッシュではありますが、映像業界を始めとして使用されている強みとして、非常に細かい複雑な形状のモデル、またそれをアニメーションとして変形、動かしたいと思ったらメッシュの軽さに軍配が上がります。また煙や水の流れなどのシミュレーションもモデルとして作れるのはメッシュならではの軽さゆえ出来るものだと思います。

Houdiniにおいて私が感動した点はまず

  • Booleanが怖くない(ライノセラスではいつもBooleanは半分くらい失敗するだろうなーという心持ち)
  • 扱えるジオメトリの数が桁違い(何万個の点を入れてもへっちゃら)
  • 膨大な数のジオメトリを動かしてアニメーションを作れる(GHでパラメータを変えると日が暮れるくらい時間がかかりそうな類の処理も速い)


という感じで、まだまだあると思われますが、ソフトウェアの特性がかなり特徴的なので、これまでライノセラス系のサーフェスモデリングツールを触ってきた人たちからすると作れるものが根本から違うため、デザインの発想自体が変わると思います。実はこれは、ツールの限界が思考の限界を暗に決めてしまっているということでもあり、特にコンピュテーショナルな分野においてはツールの進化とデザインの質は密接に関わっているので、行き詰まっている人は別のツールを使ってみるとそれを打破する突破口になるかもしれません。


Houdiniのインターフェース。オブジェクトの内部を見るときれいにBooleanされている様子がわかります



適材適所でツールを使い分ける

今Houdiniのいいところばかりを挙げましたが、実際にこれを今シンテグレートのファサードの業務で使えるかと言ったらそれは難しいでしょう。現在の業務においては図面や受領した3Dデータを元に、基準として変更してはいけないカーブやサーフェスがあり、単位の精度も1mmより細かい解像度で追っています。その精度で厳密にモデリングするには、そもそもソフトウェアの性質が異なるためにHoudiniはそういった作業に向いていません。先程挙げたBooleanが失敗しないという点も、ある程度の許容値を持って多少のジオメトリーの変更を許容しているから出来ている話であって、厳密な精度を持ってやっているわけではありません。

つまり何が言いたいかというと、適材適所でツールを使い分ける必要があるということです。すべてのことを一つのツールでやるのではなく、得意不得意を把握した上で使い分けることがより大事ということです。これはツールだけの話ではなく、模型かCGか論争にも言えることで、どちらか一方がすべてをカバー出来るのではなく、空間の把握の際は模型を使えばいいし、ビジュアルで空気感を見せたいときはCGやパースを使えばよいと思います。

シンテグレートの業務でも様々な状況に出くわします。常に頭を柔らかくして、その時々で柔軟な対応が出来るように準備しておくことが大切だなと思います。


最後に

きっとまた私のブログの番が回ってくると思うので、その際にはこの社内コンペをネタにして、通常の業務から少し離れたデザインにも多少触れつつ、箸休めになるようなものを何回か書こうと思います。仕事に直結する部分は他の人におまかせしようかなと。

ではまた。

現在製作中の天井照明、コンペ資料から抜粋①
コンペ資料から抜粋②



次回予告(嘘かもしれない)

  • コンペのコンセプト「Controlled Disorder」
  • メッシュモデリングツールの可能性
  • 「コンピュテーショナルデザイン≠最適解、効率化」という話
  • ツール由来、ボトムアップのデザインのおもしろさ
  • Ceiling Light スタディ日記
  • Ceiling Light 製作日記①
  • Ceiling Light 製作日記②

Kenichi.Kabeya

主にファサード担当。制作会社、アトリエ設計事務所、フリーランスを経て現職。モノを作るのが好き。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

10 − 3 =

コメントする