Unreal Engine4を用いて建築ヴィジュアルを描く
ヴィック有澤です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
前回の私の記事ではヴィックで制作する一般的な建築パースのワークフローについて紹介しました。
弊社では主に3DSMAXを利用して建築パース制作を行っている為、この記事は3DSMAXをベースとした内容になっていました。
3DSMAXも常日頃お世話になっている重要なソフトウェアではあるのですが、Unreal Engine4(以下UE4とする)のUE5のデモ版リリース等のEpic Gamesさんの活発な活動もあり、ここ最近ヴィックでは建築パース制作のワークフローをUE4で構築するリサーチを行っています。
今回のブログではUE4を利用した建築パース制作についてつらつら書いてみようかと思います。
UE4を活用するヴィックとしての強み
さて、ヴィックにとってUE4を使って建築ヴィジュアルを制作する事の何がメリットになるかを考えてみました。
・リアルタイムレンダリングの恩恵
リアルタイムレンダリングによってアングルやマテリアルメイキング、ライティングシミュレーションが容易になりました。3DSMAX等のプリレンダーではレンダリングボタンを押さないと見え方を確認できませんでしたが、リアルタイムレンダーでは常に最終アウトプットの状態を確認しながら様々なシミュレーションが可能になりました。これによって検討の工程がかなり短縮でき、楽をできる最終アウトプットのクオリティを高める工程に時間を割く事ができます。
今まで時間がかかっていたパートを短縮する事により、本質的な部分に時間を割く事ができるのは私達にとって非常に助かる部分です。
・VRや他コンテンツへのスムーズなアウトプット
建築パースに使ったモデルを活用してムービーやVRコンテンツ等の制作にスムーズに転用する事が可能になりました。建築業界でデジタルモックアップ等の需要も高まってきている為、UE4を活用できるシーンが多くなると考えます。
・作業連携の容易さ
UE4にはソースコントロール機能とマルチユーザー編集機能が備わっています。UE4のコンテンツデータをどこかのサーバーに上げ、これらの機能を使うことで複数のユーザーが一つのデータを同時編集することが可能になります。コロナ禍以降リモートワーク体制になってからデータをDropboxでやりとりする事が主となりました。これらの機能を活用する事でデータのやり取りが少なくなりスタッフ間の作業連携が取りやすくなります。3DSMAXを使用している場合には更新がある度に.maxデータとテクスチャデータを送らなければならないのでDropboxでのデータ転送にとても時間がかかっていました。
・ソフトウェア維持コスト
現状UE4で制作したゲーム等が一定の売上を超えた時にコストを支払わなければなりませんが、建築系においては特に言及されていないので実質完全無料ということになります。これは…かなり助かる部分です。
・データパイプラインが強力
UE4にはDatasmithという強力なインポーターが備わっています。RhinocerosやRevit,CATIAなどの建築系の幅広いデータ形式に対応したインポーターで、多少加工は必要ですがかなり綺麗にデータを取り込んでくれます。ヴィックとしてはシンテグレートと協働してる上で重要な存在となっています。ありがたや。
・豊富なアセット
QuixelのMegascansをはじめ、豊富なアセットが数多く用意されています。全般的にUE4のアセットは安いように感じます。しかも結構高品質。特にMegascansは無料ですし…信じられないです。
3DSMAXとの比較
全体的に3DSMAXとUE4とを比較して見てきて、これまで3DSMAX等のプリレンダラーで行っていた作業がUE4で行うと時間がグッと短縮できるのはヴィックとしてはとても助かる部分です。ただ、アセット管理・ネーミングルール・レベル構築等のデータ管理の部分で3DSMAXよりも細かくコーディネーションしなければならない部分があるのでしっかりとルール構築し、社内の足並みを揃えなければなりません。また3DSMAX上で行っていた作業がUE4だと実行できない場合があるので、要所要所に応じてブループリントを組んだりプラグインを導入して環境構築しないといけない部分があります。
良いノウハウを見つけ次第このブログでどんどんご紹介できればと思っています。
まとめ
こちらの槇総合計画事務所の鳥取県立美術館はコンペ段階にパースを描き、弊社の作成した3DモデルをUE4で使用してVRコンテンツに転用した代表的なプロジェクトです。詳しいプロジェクトレポートについては上記の小西さんのブログをご覧ください。一つのモデルを連携し、パースを描いてムービーを作成してVRMRも作って…というようなプロジェクトが今後も増えていくと予想されます。建築を様々な方向から表現/伝達する為に「Unreal Engine4」というプラットホームが今後必要になってくるのではないかと考えます。
また、UE4を初めとしたゲームエンジン系の恩恵によってプリセットからフィルターを選び、なんとなく良い雰囲気の絵をパッと出すことが可能になってきました。しかし、提案に即した表現かどうか一旦立ち止まり、自問自答する事を心掛けながら絵作りすることが重要なのではないでしょうか。我々としてはソフトウェアの恩恵を受けつつももう一歩踏みこみ、UE4使ったヴィジュアル制作の肝や細かいTips等を今後のブログでご紹介できればと思います。
それでは!