シンテグレートの沿革#2

シンテグレート代表の渡辺です。前回は㈱ヴィックの沿革をお話ししましたが、今回はシンテグレートの沿革の第二章をお話ししたいと思います。

#1では発足の経緯と、海外のディレクターにリードしてもらい受注した案件をこなしながら会社のベースが形作られた黎明期のお話しをしました。今回は日本チーム独自で仕事を受注して対応を始め、失敗しながらも経験を積み始めた段階の話です。

大手ゼネコン案件(2017)

2017年にはゼネコン対応案件がありました。設計・施工BIMを統括する仕事がいきなりきてしまったのです。海外ディレクター達はすでに様々な国で何件もの大型案件を経験していたためか、涼しい顔をして「じゃあこれからは日本チームで頑張れよ」といった感じで足早に帰っていきました。

今でこそ設計BIM・施工BIMなどでやるべきことは自分の中では整理できていますが、当時は何ができるのか、何をするべきかよくわからないなかで毎週定例に出席していました。そんな中でも複雑形状の箇所では、RhinocerosとGrasshopperを使って何とか成果を出せました。

しかし他の部分では、我々の設計・施工に関する知見が当時はまったく足りておらず、力不足を痛感することになりました。クライアントからはBIMのトータルなマネージメントまで期待されていたにも関わらず、程遠い結果であったと自覚しております。本当に苦い経験となりました。

ファサード案件の増加(2018)

とはいえ何故か仕事の依頼はなくならず、この年はファサードの生産設計に係る案件が入り始めました。旭ビルウォールとパルマスティーリザ・ジャパンという外装専門のサブコンからほぼ同時に仕事をいただきました。 この2社は日本で、難易度の高いファサードの設計サポートおよび施工をリードしている会社です。

同時に依頼を頂いたことは複雑形状のファサードにおいて、BIMテクノロジーの活用が本格化したことを意味していると思います。2社ともBIMに関してはその利点を認識していたものの、実務での本格的な運用までは至っていない状況だったようです。打合せでは、シンテグレートのような会社を待っていたと話していただけました。

確かに、ファサードの設計・施工におけるBIM活用はメリットが大きいと言えます。一般的に日本の施工BIMではゼネコンが仕切り役になりますが、関係している組織や会社があまりにも多いため、BIMの導入・運用には多くの困難が伴います。その点、 ファサードは躯体や設備系からある程度切り離して考えることができますし、複雑な形状であることも多いです。そのため、3Dで詳細な検討が可能というBIMの利点を、比較的早く享受することができます。

この年からシンテグレートのプロジェクトの50%以上をファサード業務が占めていくことになります。最初は1~2人で対応していきましたが、徐々に大型のプロジェクトも増え、現在では10人程度が同時にかかわる業務が進行しています。

加えてアトリエ系設計事務所や組織設計事務所から、複雑な形状のファサードに関する設計サポート業務を依頼されることも増えてきました。ゼネコン、サブコンから依頼された業務によって、多少生産設計に関するノウハウは蓄積されてきていましたが、それを基本設計、詳細設計で生かすことができるようになってきたのです。

インテリアの仕事 (2018)

この年はインテリアの仕事も舞い込んできました。シンガポールの有名なラッフルズホテルのメインバーの間接照明の設計・施工サポートです。デザイナーはフランスのJouin Manku、設計・施工が旭ビルウォールです。

デザイナーのアイデアをもとに、旭ビルウォールが詳細な設計からモックアップ製作までを行いました。その過程で我々はあらゆるシミュレーションを行いながら、ネジ1本にいたるまでのすべてのパーツをモデル化して図面などの設計情報に落とし込んでいきました。VRを使ったデザイン検証も行いました。対象は照明機器ではありますが、シンテグレートのBIMのプロセスはファサードのそれとまったく同じものでした。この案件では施主が高級ホテルということもあり、我々のフィーをしっかりと頂くことができたのもラッキーでした(インテリアの案件ではそうはいかないものも多いのではないでしょうか)。

第2章まとめ

2017~2018年の仕事をまとめると、大手ゼネコン案件で苦労しながらも、複雑形状の案件を通じてBIMへの理解を深めたフェーズだったと思います。日本チームの社員数が10人を超え、さらなる拡張を見据えて事務所も築地から現在の新富町に引っ越しました。

以前までは、私もチームも何かわからないことがあれば海外のシンテグレートメンバーに聞いていました。しかしこの頃からは、「我々だけで頑張っていこう」と意識しながら、不安定ながらも海外シンテグレートから自立していきました。日本の建設業でもBIMの活用が本格化してきた時期にも重なっていたと思います。

しかしこの時期は、まだまだ個々の知見に頼っており、チームの和としての力までにはなっていませんでした。これ以降は目の前の仕事の遂行だけではなく、今後組織としてどうあるべきかを意識していくことになります。次回は新たな事業展開とさらなるチーム拡大に向けた動きなどを中心にお話ししたいと思います。

kenji.watanabe

シンテグレート合同会社および株式会社ヴィックの代表。実はもう1社ファサード関連会社の取締役も務める。2021年より慶應SFCの非常勤講師。趣味は料理、キャンプ。旧車とくにジウジアーロ・デザインをこよなく愛す。

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